子どもができなかったことで強まった夫婦の絆

私と妻は仕事関係で知り合い、私が29歳、妻が27歳の時に結婚しました。当時は2人とも会社員で、結婚後も共働きを続けました。
婚約中から「できれば子供は2人欲しいね」と話し合っていましたが、残念ながら、その望みはかないませんでした。ですから、結婚以来ずっと、夫婦二人だけの生活が続いています。
30代のころは、そのことで、特に妻はかなり嫌な思いをしたにちがいありません。同世代の友人の多くは「ママ」になっていきますし、親類などからもたびたび嫌なことを言われたようです。男の私でさえ、子どもができないことについて、人から無神経なことを言われ、時に傷つき、時に憤慨もしたのですから、女である妻はそれ以上のストレスを感じていたことは間違いないでしょう。けれど、そのことで妻が泣き言を口にしたことは、一度もありませんでした。
今考えて「よかった」と思えるのは、30代の半ばで、夫婦そろって脱サラして、自営業を始めたこと。人生一度の大決断です。生活も当然激変しました。新しく始めた仕事がうまくいくという保証はどこにもありません。
その不安も大きかったですし、仕事が軌道に乗るまでは二人して死にもの狂いで働きました。なので、子どものことなど、人に言われない限り考えている暇などありません。それが妻にとってちょうど30代半ばから後半にかけてのタイミングでしたから、「子どもができないことばかり考えてしまう」ということにはならなかったはずです。のちに本人も、そんなことを話していました。
そして、ラッキーなことに、新しい仕事は何とか軌道に乗って、現在もその仕事を夫婦して続けています。もう、子どもができなかったことについて、人から嫌なことを言われることはほとんどなくなりました。それでも、たまに、指摘されることがありますが、私はもとより、妻もまったく気にしません。
「これが私たち夫婦の人生のあり方なのだ」という信念がありますから、人から何を言われてもなんとも感じないのです。こういう心境になるまでには、もちろん時間がかかりました。けれど、今では、「かえってよかった」と思えます。私たちが、人よりもむしろ円満な結婚生活を続けてこられた大きな理由が、子どもができなかったことにあるように思うのです。